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名古屋地方裁判所 平成8年(ワ)3028号 判決 1998年3月18日

原告

山本稔

右訴訟代理人弁護士

室木徹亮

(組織変更前の商号 有限会社飯蔵)

被告

飯蔵株式会社

右代表者代表取締役

古田茂樹

右訴訟代理人弁護士

熊田均

熊田登与子

主文

一  被告は、原告に対し、一二六万六三三三円及びこれに対する平成八年六月二二日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用は、これを一〇分し、その一を被告の負担とし、その余を原告の負担とする。

四  この判決は、原告勝訴部分に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一  請求

被告は、原告に対し、一五六九万三五三八円及びこれに対する平成八年六月二二日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二  事案の概要

一  原告は、持ち帰り弁当の販売に関するフランチャイズチェーンの事業本部である被告との間で、同チェーンの加盟店となる契約を結び、持ち帰り弁当販売店を開業したが、半年ほどで経営が破綻して閉店に追い込まれた。

本件は、原告が、被告に対して、右持ち帰り弁当販売店の経営とその破綻について、被告の契約締結上の過失又は契約義務違反によるものであるとして、損害の賠償を請求した事案である。

二  争いのない事実又は括弧内の証拠により容易に認めることのできる事実

1  被告は、「ほっとほか弁当飯蔵」の名称で持ち帰り弁当の販売店の事業を展開しているフランチャイズチェーンの事業本部(以下「フランチャイザー」という。)であり、フランチャイズチェーンの加盟店(以下「フランチャイジー」という。)の指導業務等を主たる目的とする会社である(争いがない。なお、被告は、平成九年四月一日、有限会社から株式会社に組織変更した。)。

2  原告と被告は、平成七年六月一二日、被告が原告に対し、ほっとほか弁当飯蔵チェーン事業を利用して弁当の製造販売業を行う権利を与えると共に、被告の定めたサービスマーク等を使用することを許諾し、他方、原告は被告に対し、右対価として加盟契約金(七〇万円)及びロイヤリティ(一か月五万円)を支払うとの内容のほっとほか弁当飯蔵チェーン加盟契約(以下「本件契約」という。)を締結した(争いがない。又は、甲四号証)。

3  原告は、平成七年六月三〇日、本件契約に基づいて三重県津市幸町三三番一において、ほっとほか弁当飯蔵幸町店(以下「本件店舗」という。)の営業を開始したが、その後経営に行き詰まり、平成八年一月末、右店舗を閉店した(争いがない。又は、原告本人)。

三  争点

1  事実経過

(原告の主張)

(一) 原告は、平成七年五月又は六月ころ、中日新聞紙上に掲載された、「全国チェーン」、「原価率四四パーセント」などと表示した被告の加盟店募集の広告に惹かれ、被告に連絡を取った。

(二) 被告は、原告に対し、出店候補地開発調査書、月間損益計算書等の資料を提示しながら、本件店舗で営業すれば一日一三万円余りの売上が予測でき必ず儲かるし、本件店舗は被告にとっても三重県での第一号店となるので絶大な援助をする等述べて、原告を強く勧誘した。

なお右勧誘時も被告は一貫して自らを「飯蔵CO.,LTD」と表示した。

(三) 原告は、被告が大きくて立派な株式会社であると信用し、また、被告の右資料や説明を信じて、本件契約を締結した。

(四) 原告は本件契約締結後、被告の指示に従って開店準備を進め、同年七月一日ころ、本件店舗の営業を開始したが、現実の売上金額は、多くても一日三万円であり、開店当初から被告の予測を大幅に下回った。

(五) 原告は右状況に危機感を覚え、被告に対し四ないし五度、本件契約に基づき指導援助を求めたが、被告は指導援助をしなかった。

(六) そこで原告は、同年八月ころより自力で販売促進活動を行ったが、効果はなく、その後も経営は赤字を続けた。

(被告の主張)

(一) 原告は、被告に対し、平成七年二月六日ころ、被告のチェーン店を三重県津市において出店することを希望している旨を述べた。

(二) 被告は三重県内の二か所の出店候補地につき、人口数、世帯数、事業所数、事業所人数、通過車両数を調査した上で売上を予測した。

(三) 被告が、原告に対し、同年六月九日、右予測を提示したところ、原告は、現地及びその付近の状況を確認した上で、右二か所の候補地のうちから本件店舗を選択した。なお右予測の提示に当たっては、被告は、右予測があくまでも推定による数字であることを明示していた。

(四) 本件店舗の営業は同年六月三〇日に開始されたが、開店当初は一日五万円から一〇万円の売上があった。

(五) 被告は、開店にあたり、本来三日間のオープンサポート要員を一〇日間派遣したり、同年七月下旬に店長研修を開催したりするなど、原告に対する指導援助を行っていた。

2  責任原因

(原告の主張)

(一) 契約締結上の過失に基づく責任

フランチャイズ契約においては、店舗経営の知識や経験に乏しく、資金力も十分でない個人が、フランチャイザーによる指導・援助を期待して契約を締結することが予定されているのであるから、フランチャイジーの募集に当たって、フランチャイザーは契約締結に当たっての客観的な判断材料となる正確かつ適正な情報を提供する信義則上の注意義務を負っている。

本件被告も、フランチャイザーであり、当然右注意義務を負っているところ、被告は、右注意義務に反して、被告自体の規模に関して原告を誤導するような不正確な情報を提供したのみならず、本件店舗の立地調査及びこれに基づく売上の予測に関しても、近隣の競合店をほとんど調査しない等杜撰な調査しかなかった上、売上予測の算出に当たっては極めて恣意的な計算をするなど、原告に不正確・不適正な情報を提供し、これを信用した原告に損害を与えたものであるから、被告には、本件契約を締結したことによって原告に生じた損害を賠償する責任がある。

(二) 契約上の義務違反に基づく責任

被告は、本件契約の締結に当たって、原告に絶大な援助をする旨約束し、また、本契約上も、原告の要請に基づき、原告を指導・援助する義務を負っているところ、被告は、原告からの再三の要請にもかかわらず、右契約上の義務に違反して原告に対して指導援助を与えず、原告に損害を与えたものであるから、被告には本件契約を締結したことによって生じた損害を賠償する責任がある。

(被告の主張)

(一) 契約締結上の過失に基づく責任

被告は、被告の規模について特に原告の判断を誤導するような表示をしたことはない。また、被告は、十分な市場調査をした上で、さらに被告のこれまでの経験を加味して売上予測をなし、それを原告に提示したものであるから、被告は信義則上要求される注意義務を尽くしたものである。被告の市場調査が一部概括的であったとしても、それは過大な売上を設定しているものではない。したがって被告に契約締結上の過失はない。

(二) 契約上の義務違反に基づく責任

被告は、原告に対して、前記オープンサポート要員の派遣や店長研修など十分な経営の指導・援助を与えており、被告に契約上の義務違反はない。

3  損害

(原告の主張)

(一) 加盟契約金

七二万一〇〇〇円

(二) 店舗借入費用

一二〇万三〇〇〇円

(三) 店舗内外装費用七一四万円

(四) 開店準備費用

七七万〇七八〇円

(五) ロイヤリティ(平成七年七月分から平成八年一月分)

三六万〇五〇〇円

(六) 開業後七か月間の赤字額

三四九万八二五八円

(七) 店舗原状回復費用

一〇〇万円

(八) 慰謝料 一〇〇万円

(被告の主張)

(一) 加盟契約金・ロイヤリティ

(1) 加盟契約金については本件契約上、返還しない約定になっている。

(2) 加盟契約金及びロイヤリティは名称使用・経営指導の対価であるところ、原告は名称を使用し、被告は経営指導の労務を行っているから、原告に損害はない。

(二) 店舗内外装費用・開店準備諸費用

原告が適正な経営をなしていれば、減価償却をすることができ、生じなかった損害である。

(三) 開業七か月間の赤字額

本件契約は売上保証をするものではない。

(四) 店舗原状回復費用

原告が適正な経営をなしていれば、生じなかった損害である。

4  過失相殺

(被告の主張)

(一) フランチャイジーたる原告は、自己の経営責任のもとに事業を行うものである。

(二) 原告は、本件契約を締結するに当たって、被告がなした売上予測に対して、何ら説明を求めることもないまま、それを軽信した。

(三) 原告は被告の指導に反して、リピーターの確保を怠る、原価率が上がるような独自の方式の経営を採用する等、経営努力を怠り、または誤った方針で経営を進めた。

(四) 原告は、本件店舗の開店後わずか四か月で経営の継続を断念した。

(五) 以上によれば、原告の損害を算定するにあたっては、少なくとも九割を減額するのが相当である。

第三  争点に対する判断

一  争点1(事実経過)について

本件契約の締結から終了に至る事実経過に関し、当裁判所が証拠(甲一号証、二号証の一から三まで、三号証の一から三まで、四号証、十四号証から十七号証まで、十八号証の一、二、二五号証、二六号証、二七号証、乙四号証、五号証、七号証から一一号証まで、原告本人、被告代表者本人)及び弁論の全趣旨から認定した事実は、次のとおりである。

1  当事者

(一) 被告

被告は、平成五年ころ設立され、平成七年当時、愛知県内に一八店舗、岐阜県内に二店舗の加盟店を有する持ち帰り弁当販売のフランチャイズ・チェーンの本部たる有限会社であった。

(二) 原告

原告(昭和二〇年四月一五日生)は、平成七年二月当時、津市内の病院に薬剤師として勤務しており、殖財のために副業を営むことを考えていた。原告にはそれまで商売を営んだ経験は全くない。

2  原告と被告との接触

原告は、平成七年二月ころ、中日新聞に掲載されていた被告の加盟店募集の広告に惹かれ、同月六日ころ、被告に津市内での開店を検討している旨の問い合わせの電話をした。右広告には、被告が全国チェーンである旨、原価率は四四パーセントである旨の表示がなされていた。

3  被告による市場調査

被告は、右電話を受けた後、平成七年五月三一日までの間に、津市内における出店候補地の市場調査を行った。市場調査の方法は次のとおりであった。

(一) 当時被告の代表取締役であった松下洸と被告の従業員古田茂樹が津市内の現地調査をしたのは、全部で三回であった(なお古田は、平成八年六月二〇日、被告の代表取締役となった。)。

(1) 一回目の調査においては、松下及び古田は自動車を走らせて津市内を調査し、店舗の賃貸物件を探したところ、本件店舗及び津市本町二九番二の店舗(以下「本町店舗」という。)の二か所の店舗候補物件を発見した。

(2) 二回目の調査においては、本件店舗及び本町店舗がいずれも賃借可能であることが判明した。

(3) 三回目の調査においては、松下及び古田は津市役所総務課において津市の統計資料を入手して、人口数、世帯数、事業所数、事業所内人数を調査し、三重県庁道路維持課において通行車両数を調査し、さらに本件店舗及び本町店舗の周囲の状況を自動車を走らせて調査した。

(4) 被告は、右調査の過程で、本件店舗の周囲には、別紙図面一の位置関係で、持ち帰り弁当の販売業を営むホットランチ及びコンビニエンスストアのファミリーマートが存在することを認識していた。

古田はホットランチについて調査のために弁当を買いに行ったことがあったが、味、量、種類、店員の対応等から判断して競争相手になるとは考えなかった。またファミリーマートについてはかえって客を集めてくれる存在と認識していた。

(二) 被告においては、新店舗出店にあたっては次のような計算方法で、売上高を予測していた。

(1) 半径五〇〇メートル以内に居住する人口数と、半径一〇〇〇メートル以内に居住する人口数に0.75を乗じた数の和を「人口数」とし、それに「人口指数」(0.0114395)及び「客単価」(七〇〇円)を乗じたものを「人口指数算出日売上額」とする。

(2) 半径五〇〇メートル以内に存在する世帯数と、半径一〇〇〇メートル以内に存在する世帯数に0.75を乗じた数の和を「世帯数」とし、それに「世帯指数」(0.02603)及び「客単価」(七〇〇円)を乗じたものを「世帯指数算出日売上額」とする。

(3) 店舗に弁当を購入することが予想される地区内の事業所の従業員数を「事業所内人数」とし、それに、「事業所指数」(0.019728)及び「客単価」(七〇〇円)を乗じたものを「事業所指数算出日売上額」とする。

(4) 大型車を除く通過車輌数(ただし中央分離帯のある道路においては店側車線のみの通過車輌数)を「通過車輌数」として、「通過車輌指数」(0.0050553)及び「客単価」(七〇〇円)を乗じたものを「通過車輌指数算出日売上額」とする。

(5) 右「人口指数算出日売上額」と右「世帯指数算出売上額」との和を二で除し、それに右「事業所指数算出日売上額」及び右「通過車輌指数算出日売上額」を加え、それに「経験指数」を乗じたものを「日売上額」とする。

(6) 「経験指数」は出店店舗の周囲の状況を考慮して、0.5ないし0.8の範囲で設定する。

(7) 人口数、世帯数、事業所数、事業所内人数以外の要素は考慮しない。

(8) 右計算方法は、かつて外資系のファーストフードメーカーが日本に進出する際に用いたものを被告においてアレンジしたものであった。

(三) 古田は、前記(一)の調査結果を、前記の(二)の計算方法に当てはめて、次のように本件店舗の予測売上高を算出した。

(1) 津市役所総務課において入手した統計資料をもとに、半径五〇〇メートル以内に居住する人口数を三七七五人、半径一〇〇〇メートル以内に居住する人口数に0.75を乗じたものを六九九三人と割り出し、「人口数」を一万〇七六八人とした上で、「人口指数算出日売上額」を八万六二二六円と算出した。

(2) 津市役所総務課において入手した統計資料をもとに、半径五〇〇メートル以内に存在する世帯数を一四八三世帯、半径一〇〇〇メートル以内に居住する人口数に0.75を乗じたものを二八四八世帯と割り出し、「世帯数」を四三三一世帯とした上で、「世帯指数算出日売上額」を七万八九一五円と算出した。

(3) 津市役所総務課において入手した統計資料をもとに、別紙図面二のとおりの津市内の四つの地区(橋内地区、橋北地区、橋南地区、安東地区)を弁当を購入する事業所の存在する範囲と割り出し、「事業所内人数」を四万三一七九人とした上で、「事業所指数算出日売上額」を五万九六二八円と算出した(なお右数値を前記(二)(3)の計算方法に当てはめると、五九万六二八四円となるが、この点、古田の計算には明白な誤謬があった。)。

(4) 三重県庁道路維持課での聞き取り調査をもとに、本件店舗が面している国道二三号線の中央分離帯より本件店舗側の車線の「通過車輌数」を二万五五〇〇台とした上で、「車輌数算出日売上額」を九万〇二三七円とした。

なお、右算出に当たり、古田は、大型車両を除外しなかった。

(5) 古田は、競合店「ホットランチ」が存在することなどから周囲の状況は厳しいと考え、「経験指数」を0.6と設定した上で、「日売上額」を一三万九四六一円と算出した。

(四) 古田(三)と同様の方法で、本町店舗の「日売上高」を一三万七二六三円と算出した。右算出に当たって、「事業所内人数」は二万九三三〇人、「通過車輌数」は二万五五〇〇台との数値が用いられた。

(五) なお、古田は当時まだ被告に入社してから日が浅く、原告は古田が担当した最初のフランチャイジーであり、右調査結果に自信を持っていなかった。また、松下はその当時既に経験豊富であったが、右調査中に古田にアドバイスをしたのみで、調査結果を確認することはしなかった。

4  本件店舗の地理的状況

(一) 本件店舗は、国道二三号線の西側に位置していた。国道二三号線は片側二車線ないし三車線の極めて幅の広い道路である。

(二) 本件店舗の東側には、西日本鉄道株式会社の紀勢本線及び近畿鉄道株式会社の名古屋線が通っている。

(三) 本件店舗の北側には、岩田川が流れている。

(四) 本件店舗と橋北地区、橋内地区、橋南地区、安東地区との位置関係は、別紙図面二の通りである。

(五) なお本町店舗は本件店舗と同じ橋南地区にあり、国道二三号線の東側に位置していた。

5  原告と被告との交渉過程(平成七年六月五日)

(一) 原告は、平成七年六月五日、松下及び古田と津市内で面会した。

(二) 松下及び古田は、3の調査に基づいて作成された本件店舗及び本町店舗にかかる出店候補地開発調査書二通(甲二号証の二、三)を原告に提示した。

(三) 右提示に際し、松下及び古田は、原告に対し、右調査書の「日売上高」欄記載の前記金額の売上が予想されると説明した。

(四) 原告は、右調査書の数値の根拠について、被告から説明を受けず、また、それを求めることもしなかった。

(五) 被告は、原告に対して、競合店の有無については説明せず、原告も被告に対して競合店の有無についての説明を求めなかった。

(六) 右調査書には、いずれも「上の数値はあくまでも推定による算出である。」との記載があった。

(七) 原告は、原告の勤務先に近いという理由で本件店舗を開店場所として選択し、同日、松下及び古田とともに、本件店舗を下見した。原告は、競合店であるホットランチの存在を認識し得たのに、その来店客数など自ら容易に調査可能な事項についても何ら調査を行わなかった。

(八) 原告は、本件店舗を国道沿いで弁当販売店を営業するのに向いている場所と感じた。

6  原告と被告との交渉過程(平成七年六月九日)

(一) 原告は、平成七年六月九日、津市内で松下及び古田と面会した。

(二) 松下及び古田は、原告に対し、月間売上が四〇〇万円(日販一三万三三〇〇円)、四五〇万円(同一五万円)、三〇〇万円(同一〇万円)とした場合の各損益計算書及び開設費用計算書を提示し、特に日販一三万三三〇〇円の損益計算書(甲三号証の一)を中心に説明した。

(三) 日販一三万三〇〇〇円とした場合の損益計算書には、「売上は、内外販促で大きく変化してきます、又四季変動も大きく作用します」との記載があった。

(四) 松下は、本件店舗が被告の三重県内の第一号店舗となるので、それにふさわしい援助をする旨述べた。

(五) 右交渉中、松下が原告に提示した名刺には、被告のことが「飯蔵CO.,Ltd」と表示されていた。

(六) 右説明を受けて、原告は、本件店舗の営業をなす事を最終的に決断した。

7  本件契約の締結

(一) 原告と被告とは、同月一二日、本件契約を締結した。同契約の契約書には、被告の判断又は原告の要請により被告が原告を指導・援助・アドバイスする旨の条項、口頭契約の効力を排除する旨の条項が含まれていた。また、、被告は、右契約書においても被告の名称を、「飯蔵CO.,Ltd」と表示した。原告は、これ以前に被告の商業登記の調査すらしていない。

(二) 右契約締結に当たり、古田は、原告に対して、右契約条項を一つ一つ読み上げた。このとき原告は、松下及び古田に対して、契約条項について何ら異議を述べなかったし、説明を求めることもなかった。

(三) 原告被告間において、右契約に際し、本件店舗の開店日を同月三〇日とすることが合意された。

8  開店準備の経過

(一) 被告は、同月一六日から開店までの間に、本件店舗で働く予定であったパートの人に対して三ないし四回の研修を施した。

(二) 被告は原告の開店準備を手伝わせるため、同月二八日及び二九日に古田を本件店舗に派遣した。

9  本件店舗の開店

(一) 本件店舗は、同月三〇日開店した。

(二) 被告は原告の開店を援助するため、同日及び同年七月一日には松下、古田を含む四人の社員を、同月二日から四日まで及び九日には古田を本件店舗に派遣した。

なお被告が、加盟店の開店に当たって援助を施すのは、通常開店前一日と開店後三日であった。

10  開店直後の状況

(一) 本件店舗の売上は七月一日こそ一〇万円を記録したものの、その後徐々に低下し、同月一七日以降は五万円を上回ることはなかった。

(二) 右状況に危機感を覚えた原告は、被告に対して、開店一週間後、指導・援助を電話で要請し、以後続く一週間の間に被告に対して三、四回指導・援助を要請したが、被告はそれを未だ時期尚早として取り合わなかった。

11  本件店舗の経営経過

(一) 本件店舗の月平均売上は、平成七年七月五万二五一七円、同年八月三万五五七二円、同年九月三万三六二五円、同年一〇月三万五〇八二円、同年一一月三万六五一四円、同年一二月三万六八〇八円と推移した(なお八月については一部費用を控除した額)。

(二)(1) 被告は、平成七年七月一九日ないし二二日及び二四日に、被告の大津橋店において店長研修を実施した。

(2) 原告の義兄は、本件店舗の店長になるべく右研修に四日間参加したが、同月二四日には被告に無断で参加しなくなり、結局原告の義兄は本件店舗の店長には就任しなかった。

(三)(1) 原告は同年九月ころ、調理師免許を持つ訴外高橋を本件店舗の店長として雇い入れた。

(2) 原告及び高橋は、被告に対して、同年九月五日、独自のメニューを作ったり、被告が勧めていた金券を配るサービスを止めて独自のサービスを展開したりすることを骨子とする経営計画を提案した。

(3) 被告は原価率が上がることやリピーターの確保につながらないことを理由に、右提案に反対したが、原告は原価率が上がるならそれでもかまわない旨述べたので、被告は止むを得ず右提案を了承した。

(4) 高橋の店長就任以来、原告は本件店舗の管理を高橋に任せていたが、次第に原告は高橋に不信感を抱くようになり、同年一二月ころ被告に本件店舗の棚卸しを依頼することがあった。

12  本件店舗の閉店

(一) 原告は、同年一一月ころ本件店舗の経営の継続を断念し、遅くとも同年一二月二一日までにその旨を被告に申し出た。

(二) 被告は、原告に対し、本件店舗を引き継ぐ新経営者が現れるまで本件店舗の経営を継続することを要請し、結局原告は平成八年一月三一日まで本件店舗の経営を継続することとなった。

(三) 原告は、同日、本件店舗を閉店した。

二  争点2について

1  契約締結上の過失責任について

(一)  一般にフランチャイズ契約とは、フランチャイズチェーンの本部機能を有する事業者(フランチャイザー)が、その加盟店となる他の事業者(フランチャイジー)に対し、一定の店舗ないし地域内で、自己の商標、サービスマーク、トレードネームその他の営業の象徴となる標識及び経営のノウハウを用いて事業を行う権利を付与することを内容とする契約である。右契約においては、フランチャイザーにとっては、フランチャイジーの資金や人材を利用して事業を拡大できる点が、フランチャイジーにとってはフランチャイザーの指導・援助を期待できる点が重要な要素となっている。

そして、フランチャイザーがフランチャイジーに提供する右指導・援助において、出店後の売上予測等、出店後の収益に関する情報の提供は、特にその不可欠な要素となっているものといえる。なぜなら、そもそもフランチャイジーがフランチャイズ契約に加盟しようとするのは、フランチャイザーの傘下に入ることにより、より確実に収益を得るためであるからだからである。

また、フランチャイザーは、その営業に関して蓄積されたノウハウ及び専門的知識を有しているのに対し、フランチャイジーになろうとする者は通常そのようなノウハウや知識は持ち合わせていない。さらにいうならば、フランチャイジーは、そのような知識やノウハウを持っていないからこそ、フランチャイズ契約に加盟してその欠缺を補おうとしているといえるのである。

右の各点に照らすと、フランチャイザーは、フランチャイズ契約を締結する段階において、フランチャイジーとなろうとする者に対して、できるだけ適正かつ正確な情報を提供する信義則上の義務(以下「情報提供義務」という。)を負っていると解すべきである。

(二) 被告が、本件契約において、右のようなフランチャイズ契約におけるフランチャイザーであることは争いがない。そこで、被告が右情報提供義務を尽くしたか否かについて以下検討する。

(1) まず、一2、6(五)及び、7(一)で認定した事実によれば、被告は、一貫して自己のことを「CO.,LTD」、「全国チェーン」等と表示していた。

確かに、右事実から直ちに被告が、自己の規模を隠そうとする意図があったということまでは断定できない。なぜなら、「CO.,LTD」が必ずしも常に株式会社を指すわけでもないし、株式会社だからといって規模が大きいものばかりとは限らないからである。また、「全国チェーン」といってもきわめて幅のある概念であるからである。

しかしながら、右のように被告が、自己の規模について結局原告に正確に説明しなかったことは、原告の側からその説明を求めず、またその確認もしなかったことを考慮しても、被告が前記情報提供義務を果たす意思があったのか疑問を生ぜせしめる一要素であることは否めない。

(2) 次に、被告が原告との交渉にはいる以前になした本件店舗に関する市場調査は適正なものであったといえるかどうかについて検討する。

まず、被告が売り上げ予測を算出するために用いた計算方法については、統計学的根拠を有するとまで認めるに足りる証拠はない。

しかしながら、統計学的根拠を有すると認めるに足りる証拠がないからといってただちに不合理な計算方法であるとは言えず、実際、一3(二)で認定した被告の売上予測の算出方法は、それなりに精密な部分も見受けられ、合理性が認められる部分も少なからず存在する。また、競合店の存在についても、被告は、「経験指数」を低く設定することで反映させており、この点に関して特段の疑問を生じない。

もっとも、一3(三)ないし(五)で認定した、右計算方法に具体的な数値を当てはめる段階については、右計算方法及び被告が本件市場調査において行った数値の当てはめに、以下のような疑問点がある。

① まず、被告の行った調査は、本件店舗が被告にとっては最初の三重県内での店舗であったにもかかわらず、調査に当たったのは、松下と古田のわずかに二人であるし、また、行った調査も、車を走らせて本件店舗の周囲を調べたり、市役所や県庁で統計資料を収集するという程度のものであった。

② 次に、「人口数」及び「世帯数」の算出に当たって、半径一〇〇〇メートル内の人口数及び世帯数が、半径五〇〇メートル内の人口数及び世帯数よりいずれも多く見積もられているのは奇異の感を拭えない。確かに一〇〇〇メートル内の人口数に関しては、0.75を乗じてはいるものの、それでもなお、近くよりも遠くから買いに来る人が多いという予測にはその正確性に大いに疑問を生ずると言うべきである。

③ また、「事業所内人数」の算出に当たっても、別紙図面二のように、本件店舗からきわめて遠隔の地にある橋内地区、安東地区が弁当を購入する範囲に含まれている点は、甚だその合理性に疑問が生ずる。本件店舗と格段距離が離れていない本町店舗と本件店舗とで「事業所内人数」が大きく隔たっているのも、被告による算出が恣意的なものであったのではないかということを疑わしめるものである。

④ さらに、「通過車輌数」の算出に当たっても、出店候補地開発調査書の記載に反して、被告は、大型車両を除かず、また、はたして中央分離帯より店舗側だけの車両数だけを数えたのか疑わしい点からすれば、被告の市場調査に望む姿勢の誠実さにも疑問が残るところである。

⑤ 右②ないし④の疑問点は、各種指数及び経験指数を掛け合わせることによって圧縮されるから、売上予測の瑕疵としては、原告が主張するほど決定的なものとはいえない。しかしながら、右指数を掛け合わせることで右全ての疑問を拭い去れるものでもない。

⑥ 加えて、被告は、前記のとおり「事業所指数算出日売上額」を計算する際に明白な誤謬を犯しているのであり、このこと自体、被告による算出の正確性に疑問を生じさせるものである。

もし、右誤謬がなかったとすると、本件店舗の「日売上高」は、四六万一四五四円となるが、この予測は被告算出の「日売上高」をはるかに超えるもので、実態との乖離は益々甚だしくなっている。このようにそもそも計算ミスがなければそれらしい数字が出てこない点からも、被告の売上予測の正確性にはきわめて強い疑問が残るのである。

⑦ のみならず、被告の右調査及び売上予測算出に中心的に携わっていたのは、当時入社間のない古田であり、経験豊富であった松下は古田が売上予測を算出したあとにチェックすらしなかったというのであるから、被告の売上予測の妥当性は技術的な側面からも疑問が残る。

⑧ また、一4で認定した本件店舗の地理的状況についても、原告が主張するように広い国道、鉄道、河川を越えて弁当を買いに来るということはありえないとまではいえないにしても、やはり一定の限度で考慮すべきではなかったか疑問が残る。

⑨ 実際、本件店舗の売上は、被告の算出した売上予測には全く及ばなかった。

(3) さらに、一5、6で認定した事実によれば、出店候補地調査書を用いた松下及び古田の説明は必ずしも、原告に経営のリスクを認識させるに十分でなかったことが窺われる。確かに、被告の売上予測はあくまでも推定による算出で変動がありうることが、出店候補地開発調査書や月間損益計算書に記載されてはいたものの、松下は、当時フランチャイザーの代表者であって、弁当店経営の専門家であるのに対し、原告は全くの素人であったことを考慮すると、松下は口頭でももう少し詳しく説明をするべきであったといえる。

(三)  (二)(1)から(3)の事情を総合的に考慮すれば、被告は、自己に関する適正な情報を原告に与えようとしなかったのみならず、十分な市場調査をせず、しかもそのような不十分な調査に基づく売上予測を漫然と原告に提示して、不正確かつ不適正な情報を原告に提供したものといえるから、前記情報提供義務を怠ったものというべきである。

そして、一に認定した事実によれば、被告の右情報提供義務違反と、原告による本件店舗の経営とその破綻との間には、因果関係があると認められるから、被告には、被告が十分な情報提供を怠ったことによって原告に生じた損害を賠償する責任があるというべきである(ただし、契約は事実上有効に成立しており、被告が賠償すべき原告の損害は、右情報提供義務違反と相当因果関係のある限度に限られる。

2  契約上の義務違反について

(一) 一6(四)、7(一)で認定したとおり、本件契約により、被告は、被告の判断又は原告の要請により被告が原告を指導・援助・アドバイスする契約上の義務を負っていた。

(二) 一8(一)、(二)、9(二)、11(二)(1)で認定された事実によれば、被告は原告に対して、開店準備の指導・援助や、店長や店員の研修を施しており、また右指導援助の程度も、本件店舗が被告にとって三重県内で最初の店舗であったことを考慮したためか、被告の他の店舗に対する指導援助より幾分か厚いものであったことが認められる。

(三) 右の点からすれば、被告は、契約上の義務を履行していたというべきである。

なお、原告は、前記一10(二)の原告の指導・援助要請を被告が無視したことがあったとして契約上の義務違反を主張するが、右要請の時期が本件店舗開店の直後であったことを考えると、被告が指導援助をなすのが尚早と考えるのにも一応の合理性のあるところであり、右認定を覆すものではない。

三  損害

1  加盟契約金

(一) 証拠(甲五号証)によれば、原告は、被告に対し、平成七年六月一二日、本件契約に基づき、加盟契約金として七二万一〇〇〇円(三パーセントの消費税を含む。)を支払ったことが認められる。

(二) 右加盟契約金は、加盟店としての資格付与の対価、店舗の市場調査の対価、開店指導援助の対価、サービスマーク等の使用料の頭金としての性質等を併せ持つものと解されるところ、本件のように、フランチャイザーのなした市場調査が不十分であった場合、それに相応する加盟契約金の一部が返還されうることはあり得るというべきである。

しかしながら、証拠(甲四号証)によれば、本件契約三条二項には加盟契約金不返還条項が規定されており、右条項は有効なものと認められるから、原告の加盟契約金返還請求は理由がない。

2  店舗借入費用

(一) 証拠(甲六号証、七号証、八号証の一から三まで)によれば以下の事実が認められる。

(1) 原告は、平成七年六月一二日、訴外久喜興産株式会社を介して、訴外宮田恵美子との間で本件店舗の建物を目的とする賃貸借契約(以下「本件賃貸借契約」という。)を、期間を平成七年七月一日から三年間、賃料を月一〇万円とする約定のもとに締結した。

(2) 原告は、右久喜興産株式会社に対して、同日、仲介手数料として一〇万三〇〇〇円を支払った。

(3) 原告は、右宮田に対して、同日、本件賃貸借契約に基づき、礼金(本件賃貸借契約上返還されない約定となっている。)として五〇万円、保証金として五〇万円、同年七月分の家賃として一〇万円を支払った。

(二) 右原告の支出のうち、

(1) 仲介手数料については、原告としては、久喜興産株式会社の仲介を受けることによって本件店舗を確保することができたのであって、手数料分の利益を受けているといえるから、原告の損害とは認められない。

(2) 礼金については返還されない約定となっているから基本的には、原告に生じた損害と言える。ただし原告も七か月間本件店舗を利用することができたのであるから、一定の償却をなす事を相当とすべきである。具体的には、原告の損害は、つまるところ原告が経営を継続することが困難になったことにあるといえるから、少なくとも三年間同じ礼金で利用できるはずであった店舗が七か月間しか使用できなかったものとして、右礼金の三六分の二九(四〇万二七七七円)が原告の損害と考えるべきである。

(3) 保証金については、本件賃貸借契約上、もともと原告に返還される予定のものであるから、原告の損害とはいえない。

(4) 平成七年七月分の家賃については、原告は同月に本件店舗を使用できたのであるから、原告の損害とは認められない。

(三) 結局、店舗借入費用については、四〇万二七七七円が原告に生じた損害であり、これが被告の前記情報提供義務違反と相当因果関係のある損害にあたると解される。

3  店舗内外装費用

(一) 証拠(甲第九号証から一一号証まで、一二号証の一、二)によれば、次の事実が認められる。

(1) 原告は、平成七年六月一三日、訴外株式会社ヨシオカ建設(以下「ヨシオカ建設」という。)との間で本件店舗の内外装工事を目的とする請負契約を、請負代金六八〇万円(消費税は別途)とする約定のもとに締結した。

(2) 原告は、同日ヨシオカ建設に対して、右請負代金として一六〇万円を支払った。

(3) 原告は、同年七月三日、ヨシオカ建設に対して、右請負代金の残額五四〇万円を銀行振込の方法で支払った。

(4) 原告は、(1)の契約において負担した請負代金とは別途、ガス工事代金として、一四万円をヨシオカ建設に支払った。

(二) 本件店舗の経営の破綻により、原告は、右破綻以降、本件店舗の設備等を使用することができなくなった損害があり、右損害は被告の前記情報提供義務違反と相当因果関係のある損害にあたると解される。

そして、本件賃貸借契約の存続期間から本件店舗の営業は少なくとも三年間は継続したというべきであるから、右原告の支出合計七一四万円に三六分の二九を乗じた五七五万一六六六円が店舗内外装費に関して原告に生じた損害といえる。

4  開店準備費用

(一) 証拠(甲一三号証)によれば、原告は総合店舗保証保険金(二か月分)として二万円、調理小物等の費用として一八万七八〇〇円、什器備品・開店資材費用として五六万二九八〇円をそれぞれ支払った事実が認められる。

(二) 右に認められる原告の支出は、レジ代(二二万円)を除き、いずれも本件店舗の開店時ないしその直後に、その価値が償却される消耗品などである。したがって、右レジについて少なくとも三年間は使用する予定であったとして三六分の二九を乗じた一七万七二二二円のみを原告の損害と認めることができる。

5  ロイヤリティ

証拠(甲四号証)によれば、ロイヤリティは、サービスマーク等の継続使用及びほっとほか弁当飯蔵システム継続使用の対価と認められるところ、被告は、平成七年六月三〇日の開店から平成八年一月の本件店舗閉店に至るまで右各継続使用を原告に許諾し、原告はこれを使用していたのであるから、原告が被告に右期間中ロイヤリティを支払ったとしても、原告の損害とは認められない。

6  開業後七か月間の赤字額

フランチャイズ契約においては、フランチャイジーはフランチャイザーの指導援助を仰ぐことが予定されているとはいえ、法的にはあくまでフランチャイザーとは独立の事業体であると解されるのであって、契約においてフランチャイザーがフランチャイジーに対して利益を保証する等特段の事情がない限り、フランチャイジーは自己の店舗の利益損失につきその責に任ずるというべきである。

本件においても、被告が原告の収益を保証した等の特段の事情は証拠上認められず、原告が、被告に対して、赤字の補填を請求できる根拠はない。したがって、原告の赤字額を認定するまでもなく、原告の赤字補填の請求には理由がない。

7  店舗原状回復費用

(一) 証拠(甲六号証、原告本人)によれば、原告は宮田との関係で本件賃貸借契約終了時に本件店舗を原状に復する義務を負っており、平成八年二月ころその費用として少なくとも五〇万円の債務を負担し、右債務と原告が宮田に対して有する五〇万円の保証金返還請求権とを対等額で相殺したことが認められる。

なお、その余の原告が負担した原状回復費用については、これを認めるに足る証拠はない。

(二) 右のとおり、店舗原状回復のための費用については、もともと本件賃貸借契約の終了時に原告が負担することが予定されていたものであるから、原告の損害とはいえない。

8  慰謝料

原告の財産的損害が回復されれば、あわせて原告の精神的苦痛も回復されると解されるから、原告の慰謝料請求は認められない。

9  以上により、被告の前記情報提供義務違反と相当因果関係のある損害の合計額は、合計六三三万一六六五円となる。

四  過失相殺について

1(一)  一(二)で認定したとおり、原告は、本件契約締結当時五〇歳の薬剤師であるから、大学において一般的な教養を身につけた社会人であり、持ち帰り弁当の販売のような商売を営む経営上の危険性について十分理解し、判断する能力を有する者である。また、殖財のための余業として本件契約を締結するに至った者である。

(二)  一5(四)、(五)、(七)、7(一)、(二)で認定した事実によれば、原告は被告との契約締結段階において、被告がなした売上予測の具体的な根拠や競合店の有無について一切説明を求めようとしなかったし、自ら調査を行うというようなことは何らしなかった。特に、被告が原告に対して提示した出店候補地開発調査書には、明白な誤謬があったにもかかわらず、原告はそれを確かめようとすらしなかった。かかる原告の態度は、原告がそれまで商売を営んだ経験がなかったことを考慮しても、なお相当に軽率とのそしりを免れないものである。

(三)  一5(六)、6(三)で認定した事実によれば、被告が原告との交渉過程で原告に対して提示した出店候補地開発調査書及び月間損益計算書等には、売上予測はあくまで推計の域を出ない旨の記載があり、原告はこのことを認識していたし、その意味を理解することが可能であった。

(四)  一5(七)で認定した事実によれば、原告は、自己の意思で本件店舗を選択し、下見をした上で、本件店舗を開店している。

(五)  一11(二)、(三)で認定した事実によれば、原告は、被告の指導援助を必ずしも受け入れず、また独自の経営路線を追求しながら、自分が雇った店長と確執を生ずるなど、独自の経営がかえってうまくいかなかったことが窺われる。

(六)  もっとも、一12(一)で認定したように、原告が本件店舗の経営をわずか四か月ほどで断念したことについては、本件店舗の業績が当初の売上予想を大きく下回り続けたことを考慮すると、やむを得ないことであったと考えられる。

2 右の諸事実、及びそもそも原告は被告のフランチャイズチェーンの傘下にあるといってもあくまで独立した事業者であるということを考慮すると、本件店舗の経営とその破綻については、原告も相当の責任を負っているというべきである。

そして、原告の責めに帰すべき事由の内容と、被告の義務違反の内容、程度等の事情を勘案すれば、原告に生じた損害の八割を減ずるのが相当である。

原告の損害は、前記のとおり、六三三万一六六五円であり、右金額から八割を減額すると、被告が賠償すべき原告の損害額は、一二六万六三三三円となる。

(裁判官榊原信次)

別紙図面<省略>

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